HOME >> ドロボウの心理学・生態学
あなたが買い物や旅行からかえってきたとして、おもむろにドアを開けたとします。
と、奥のほうに怪しい人影、物音が・・・
このような時は確かめに家の奥深く入り込んではいけません。必ず音を出さないよう
にして家や部屋から出、周囲の人に助けを求めてください。ドロボウは全神経を集中
させて盗みに励んでいます。このようなときに不意に家人と対面し、金きり声でも上
げられた日には、ドロボウのほうでもパニックになってしまいます。豪胆なドロボウ
でも温厚?なドロボウでも、逮捕の恐怖から逆上します。家人に襲い掛かり、最悪口
封じの殺害ということにもなりかねません。特にマンションの2階以上の部屋では、
ドアをふさがれたら袋のねずみ、瞬時に逃げるのはまず無理。居直り化する危険も大
きいと言えます。
マンションの上階に一人で住む若い女性の中には、帰ってきたときは「無人の部屋」
に向かって「ただいま」と声をかけ、一呼吸おいてから部屋に入る人もいます。ドロ
ボウがいた場合、「逃げるスキ」を与えているのです。金品を奪われるのは辛くとも、
命を奪われては何にもなりませんから。
ホームセキュリティーとは侵入対策ですが、中に侵入された泥棒に対面した際のこと
までは想定されておりません。滅多に無いこととはいえ、ドロボウに対面した時は
とっさの判断が生死を分けるのです。
留守宅に入り込んで財産をさらうのが「空き巣」。人の居る家に押し込み、家人を脅
して財産を奪うのが「強盗」です。このどちらにも当てはまらないのが「居空き」で
す。あえて人の居るのがわかっている家に忍び込み、こそこそ財産を盗み取るドロボ
ウ。一見危険なように見えますが、人の居る家ならば鍵があいていたり、ホームセキ
ュリティーシステムが作動しなようにしてあるなど、忍び込むには好都合といえます
。何より人が家に居る、ということは財布がおいてある、つまり「現金がある」とい
うことですから、確実な利益にもつながります。
居空きが狙うのは一軒屋。大きな家の割りに家族が少ない、または老人がひとりで留
守番しているような家がターゲット。二階にいたり、一階で大音量でテレビでも見て
いればなおさら好都合です。庭の草むしりの最中でもいいのです。
一人暮らしのアパートやマンションでも、風呂の最中や睡眠中に忍び込まれる例はあ
ります。
何よりも怖いのは、家人がいることを知った上での犯行ですから、見つかれば容易に
居直り強盗になってしまうことです。
鍵を開けっ放し、なおかつセキュリティーシステムが作動していないなぞ、まさに
自殺行為です。
ドロボウ家業で大切なのは、「最初の五分間」。
五分以内で窓やドアを破り、中に侵入できなければあとの仕事にさしつかえます。
ボヤボヤしていれば大切なお宝も発見できないうちに家人に見つかり、最悪逮捕が待っ
ています。だから五分間で侵入できないホームセキュリティーシステムを常備していれ
ば、ドロボウもあきらめてくれるといえます。
さてその五分間ルールをまんまと突破し、家に侵入したドロボウさんは、全神経を集
中させて金のありかをさぐります。その間わずか、五分から10分。手馴れたドロボウ
ほど、金のありかに敏感なのです。一般人ならば財布や通帳のありかと言えば服のポケ
ット、仏壇や台所のタンス、といったところでしょう。証券や保険証書などのような、
高額で滅多に使わないようなものは、意表をついたところに隠している人も多いでしょ
う。しかしドロボウはそのようなところからも微かにただよう「財産の匂い」をかぎつ
け、あっさり盗みだしてしまう。
しかも「意表をついたところ」に隠した財産は、家人が毎日毎日点検するわけでもあり
ませんので、発覚が数日後になってしまうことすらあります。
当然、ドロボウは、とっくに逃げ去ったあとなのです。
防犯装置が作動すれば警備員が訪問するようなセキュリティー会社の場合でも、通報が
あってから現場到着までは「二十五分以内」とされています。
つまり、この間に仕事をすませればいいのです。
どんなに優れたドロボウであっても、手ぶらでは仕事はできません。ドアが開けっ
ぱなしの家に入り込むならともかく。ドロボウは人目につかない、安価に手に入る、
そして何より、持ち運びしやすい小さな道具を数々たずさえてドアを破り、仕事に
励むのです。七つ道具、いや、必ずしも七つである必要は無いのですが、ドロボウ
が必ず持ち運びしているのは、たとえばこのような物です。
・ロープ 侵入や逃走の際の足がかりにする。いざと言う時は、家人を縛り上げる
・ドライバー ドアや窓の孔子をはずす時に使う。
・バール ドアや金庫の隙間に差しこみ、むりやりこじ開ける
・アイスピック 窓ガラス破りの際に使う。いざと言う時は武器に
・ライター ガラスを熱の差で破る「焼き破り」に用いる。
・タオル 「焼き破り」で、熱したガラスを冷やして割る時に用いる。
指紋を拭き消すことも。
・ガムテープ ガラスを割る際に窓に貼り付け、破片が飛び散ったり音がしないよう
する。いざと言う時は、家人を縛り上げる。
・手袋 指紋を残さないために、どうしても必要。
・ビニール足袋 足跡を残さないための必需品。
これらの道具は、当然戸外のホームセキュリティーを壊す時にも使えますので留意が
必要です。
何度も下見と張り込みを繰り返していたターゲットの家に、ついに押し入る日がや
ってまいりました。まずドロボウは、ポストと洗濯物を見ます。何日分もの新聞や郵
便、ビラがたまっていれば、何日も留守の証拠。安心して仕事ができます。この街を
郵便の配達人が回ってきたのは午後二時過ぎなのに、四時になってもポストの郵便を
取りに来る気配が無い、いい天気で洗濯物はカラカラに乾いているのに、取り込む気
配が無い、もう日が暮れたのに、布団が干したまま・・・これも留守の証拠です。
また、「日あたりがいい物干し場がある家なのに、軒下に洗濯物を干してある」これ
は、「留守中に雨に降られたら困る」という意味合い。どちらにしても人はおらず、
ドロボウは安心して仕事ができるでしょう。
ホームセキュリティーは機械の設置にとどまらず、日ごろの生活にも留意すべきです。
こんな簡単な日常の風景からも、情報が漏れてしまうのです。
では早速侵入!でもそのまえに最後のチェック。あらかじめ盗み出しておいたポスト
の郵便物から電話番号を割り出しておき、公衆電話で電話をかけるのです。留守であ
ればオンの字。電話番号がわからない場合は、窓に小石をぶつけるかチャイムを鳴ら
して反応を確認。運悪く住人が出てきたなら、新聞勧誘員のふりでもしてごまかせば
いいのです。
新聞勧誘員は「あやしい」人間が多いので、身ぎれいなドロボウと見分けがつきませ
ん。
この文章を書いている私は、14年ほど前に当時流行った「アポイントメント商法」。
例の、電話に出たら「おめでとうございます!あなたは首都圏3万名の中からモニタ
ーに選ばれました!つきましては当社にお越しの上・・・」などといって呼び出され、
イソイソと行ったら拘束され、必要の無い高額の会員権買わされる・・・に引っかか
りかけ、3年前には先物取引のサギに引っかかった経験があります。
いずれの場合も、それから1年くらいの間はその手の業者からの勧誘電話が何度もか
かってまいりました。そのような業者にかかわりを持ち、うっかり電話番号など教え
てしまいますと「あいつはだまし易い」との評判が名簿業者を通じて広まってしまう
のです。数年前はやった悪徳リフォームでも見られたことですが、ドロボウでも同じ
ことが言えます。
ドロボウは一度忍び込んだ家に、再度忍び込むことがあります。一度忍び込めばその
家の間取り、家族構成、ホームセキュリティーシステムの設置場所、金のありかなど
は丸わかり。さらに一度目の侵入の前にその家について「予習」などしていたはずで
すから、復習と言うことで仕事がしやすいのは当たり前。いくら家側が鍵を換えたり、
貴重品の置き場所を変えたにしても、経験豊かなドロボウは見破ってしまうのです。
ドロボウの侵入の手口に、ドアの隙間にバールを差し込んでむりやりこじ開けるもの
があります。これの被害にあうとドアはゆがんでしまいますが、そのドアを付け替え
ず、無理やり使用している家があります。これでは最初に入られたドロボウはもとよ
り、すべてのドロボウに「うちは入られました」と言いふらすようなもの。
スキがあると判断される可能性が大きいので、無理してでもドアを換えてください。
ドロボウが初めてやってきた街ですぐさま「仕事」をするということはまずありま
せん。まず街をくまなく歩き回り、金がありそうで侵入しやすく、なおかつ逃げやす
そうな家にあたりをつけます。そして何度も下見に来て、その家の家族構成、家族の
一日の行動パターンを把握します。夫婦共働きで子供も大きければ昼間は誰もいない
ですし、留守番がいたとしても年寄りならば抵抗はされない・・・息子は空手をやっ
ていて、渡り合えば勝ち目は無いが、部活動で帰るのは七時過ぎ・・・
同時に外から見てわかるホームセキュリティーシステムにも留意します。本職のドロ
ボウならば玄関上に置かれた監視カメラが本物かイミテーションか瞬時に見破ります。
最近ではよく玄関先に等身大の「犬」の置物を置いた家庭がよく見受けられます。
しかしこのようなものは「一見さん」はともかく何度も下見に来るドロボウには何の
意味もありません。むしろ「ウチには番犬はいないよ。安全に忍び込めるよ」と言っ
ているようなもので効果です。「猛犬注意」と門に張り出している家であっても、
それが本当か、出任せか下見で見破られてしまいます。
何事にも、準備は大切です。
「人を見かけで判断してはいけない」
当たり前のことですが、ドロボウにも当てはまる言葉です。ドロボウの服装として、
地下足袋にほっかむり、背中には大きな唐草模様の風呂敷包み・・・こんなドロボウ
がいるはずありません。では黒っぽい服装でハンチングを被り、サングラスをかけ・
・・いかにもありそうな姿ではありますが、こんな服装でマンションの通路や高級住
宅地をウロウロしていれば、たちどころに怪しまれます。
大抵の「あやしい人間」は、怪しまれないように整った身なりをしているものです。
外回りのビジネスマンを装い、ビシッとスーツ、までは行かないものの、他人から見
て好印象を持たれる身なりをしています。
ここ2、3年ころ流行った、年寄り相手の「リフォーム詐欺」。善良な年寄りにつけ
込んで財産を騙し取る悪辣なこの商売の営業マンは、大抵髪の毛を短くしていたとい
います。理由は、「短髪のほうが年寄りに気に入られ、信用されるから。」人生経験
の長い年寄りでも、ここまで簡単に外見で判断してしまうのです。
整った身なりで街をうろついても怪しまれません。職務質問されてもいくらでも言い
逃れできます。家やマンションの部屋に忍び込もうとして怪しまれた際にはすばやく
手近の表札を見、「久しぶりに尋ねてきた、〜の知り合いですよ」などと言えばいい
のです。
内面は顔かたちはともかく、身なりなどいくらでもかえられます。
しかし、ホームセキュリティーシステムの「機械の目と耳」はごまかせません。
体温まで隠すことはできません。
ドロボウが恐れるのは、何といっても視線、光、音です。
実際の人間の視線は言うまでもありませんが、監視カメラも絶大な威力を発揮します。
本体の価格が3万円程度の本物のカメラ以外に、昨今では数千円程度で買えるニセの
監視カメラ、「ダミーカメラ」というのもあります。丹念に見れば本職のドロボウさ
んには見破られてしまいますが、こういうものが存在する事自体、視線を恐れるドロ
ボウさんの心理が見て取れます。
次に光。光は暗闇のドロボウさんを照らすサーチライトの光であり、ドロボウの侵入
に反応して輝く警報機の音。まして空に太陽が光り輝いている時間ならば、ドロボウ
の姿などたちどころにわかってしまいます。
そして音。音は警報機の音であり、ドロボウを見つけて騒ぎ立てる声であり、激しく
吠え立てる番犬の声であります。
逮捕につながる連想をさせる「目、光、音」を、ドロボウは嫌います。
ホームセキュリティーシステムは、これらドロボウが嫌がるものを最大限に生かして
住宅を侵入から守るのです。
しかしドロボウを守る音もあります。周囲が騒がしい場所であると住んでいる人間は
その音にのみ気を取られてしまい、ドロボウがドアをこじ開け、タンスをあさっても
何も気がつかない。
あくまでも、逮捕につながるものをドロボウは嫌がります。
お勧めするわけではありませんが、ドロボウは成功さえ続けば、実入りがいい「商売
」です。捕まりさえせず、大穴を当てれば数年間でサラリーマンの年収以上もの「収
入」が手に入ります。しかしそのストレスたるや、想像を絶するものであります。世
間のサラリーマンならば、仕事でミスしても上司やお客さんにこっ酷くしかられるだ
け。人生をすべて棒にふることなぞ、めったにありません。そしてお天道様の下でま
っとうに仕事を自慢できます。しかしドロボウは・・・
運よく忍び込んだはいいものの、どこに財布や通帳があるか。ホームセキュリティー
システムに引っかかりはしないか、金庫の鍵は開くか。もし「仕事」を終える前に家
人が帰ってきたら・・・
見つかれば逮捕、運よく逃げおおせても大ケガを追う可能性が高く、ケガをしても足
がつくのを恐れて、おちおち医者にもかかれません。第一、このような世間に顔向け
できない商売をしていれば、結婚などできるはずも無く、ひとりさびしく死んでゆく
ほか無いのです。
そこで「仕事」の際のストレス発散のため、人生の憂さを晴らすために、大もうけを
した泥棒でも稼ぎの大半はギャンブルにつぎ込むドロボウがほとんどだといいます。
「悪銭身につかず」とは、まさにこのようなことをあらわしているのでしょう。
ホームセキュリティーは、このような可哀想な商売をしないように、ドロボウ未満?
の人を更生する役目も果たしているのです。